というお尋ねをいただきました。
きものをよくお召しになる方には全く問題のないことなのですが、
初心者の方で、自分で着物をお召しになったことがないという方。
成人式のときなど着せてもらった経験はお持ちでも、
ご自分で着たことがない方にとって、
「スナップボタンがひとつ」なのはとてもいいことなのか、どうなのか。
つむぎやの他の商品には、「引き糸がついています」という表示のものも
あったりして、これも多分意味がわからないままでしょう。
初心者の方に説明が不十分で、申し訳ありません。
ここで詳しくお伝えします。
まず、「スナップボタンがひとつ」というのは、
衿が広い衿なので、中心で半分に折って固定し、
衿の合わせが、やりやすいようにするためのものです。
スナップボタンはひとつついているものと、
三つついているものがあります。
スナップボタンが三つついているものは、
中心にひとつと、その左右に10センチくらい離れたところについています。
スナップボタンが三つついているものは、
衿を半分に折って広い範囲にわたって動かないようにしているもので、
胸の衿合わせが、よりやりやすくなります。
たいていの広衿の着物は、
スナップボタンがひとつけてあるのが、主流ですが、
上質な着物や、着付けに気を配った丁寧な仕上げを求める方は、
スナップボタンを三つつけることもあります。
そのスナップボタンと同じ役割をするのが、「引き糸」です。
「引き糸」もスナップボタンと同じく、広い衿を半分にして固定して、
着物の衿合わせをしやすくし、着用しやすくするためのものです。

スナップボタンがまだなかったころは「引き糸」が当たり前でした。
またスナップボタンが主流になっても、
さびの問題があるので、「引き糸」を付ける仕立ても残っています。
「引き糸」も三つつけてあるものもあり、
着物を着るときには、三つついている方が、
より胸の衿合わせがやりやすくなります。
衿元を華やかにするために、
振袖や訪問着などに、伊達衿というもう一枚着物を着ているかのように、
衿をのぞかせる技や、比翼衿という、
同じく衿をもう一枚出してきているように見せる着かたがあって、
そういった着かたをする際には、
スナップボタンや引き糸は、三つあった方が扱いやすいです。
ですから、小紋だとたいてい、
スナップボタンや引き糸は、
中心の一箇所のみについていることが多いです。
丁寧な仕上げをしている仕立てやさんだと、
スナップボタンを布でくるんで取り付けてあることもあります。
スナップボタンや引き糸があれば、着付けはしやすくなりますが、
なくても洗濯バサミなどを利用して、
衿を半分に折ることができますので、
ついていないと困る、というほどのものでもありません。
スナップボタンは、ぼこぼこするんじゃないか、と感じるかもしれませんが、
衿の後ろのところですし、
着姿に影響がでることもありません。
現代ではスナップボタンが主流になっているようですし、
この方が便利だと感じるかもしれませんが、
着物になれてくると、スナップボタンをはずして、
引き糸をつける方が多いのではないかと思います。
これはあくまで推測ですが、
金属のものはなるべくはずして、糸にした方が、
湿気でサビがでる心配もなくなるからです。
「引き糸」は糸を広衿の幅の端に通して、
玉止めをしただけのものです。
着用するときに、一方を引くだけで、
衿を半分に折ることができます。
ですから、商品に「スナップボタンなどはなし」と表示しているものは、
スナップボタンも、引き糸もないということです。
スナップボタンも、引き糸もないきものでも、
きれいな洗濯バサミで、衿の中央を半分に折れば、
着付けそのものは問題なくできます。
「引き糸」は、取り付けがとっても簡単です。
なにせ、玉止めだけなんですから。
ここに、黒い糸で「引き糸」を取り付けた色無地があります。
「引き糸」なら糸の一方を引っ張るだけ。
あなたもぜひ、試してみてください。
「引き糸」はこんなに簡単に取り付けられますから。
(通常は白い糸にしてください)


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